山梨県北杜市立須玉小学校公式サイト
校内研究の概要

【1.研究主題】
数学的に考える力を高める指導法の研究
〜算数科における表現力指導の工夫を通して〜
【2.主題設定の理由】
 @ 新学習指導要領から
   昨年度から本格実施された新学習指導要領では,「生きる力」をはぐくむための  きな柱の一つとして,「確かな学力」を育成する取り組みが必要であるとしている「確かな学力」とは,知識や技能に加え,学ぶ意欲や思考力,判断力,表現力など含む幅広い資質や能力から構成される能力のことである。今回の改訂の注目すべきは,やはり「表現力」であり,算数科の目標は次のようになっている。

 算数的活動を通して,数量や図形についての基礎的・基本的な知識及び技能を身に付け,日常の事象について見通しをもち筋道を立てて考え,表現する能力を育てるとともに.算数的活動の楽しさや数理的な処理のよさに気付き,進んで生活や学習に活用しようとする態度を育てる。   

 算数の目標の中に,「表現する能力を育てる」という文言が入り,単に「表現するとは違い,「表現する能力を育てる」ことを求めている。表現するだけであれば,これまでも多く行われ,「自分の考えをノートに書く」「問題の解き方を発表する」などの活動がそれにあたる。「表現する能力を育てる」という文言が付け加えられた由が,学習指導要領解説の「改訂の経緯」(P.2)に記されている。

思考力・判断力・表現力等をはぐくむために,観察・実験,レポー卜の作成・論述など知識・技能の活用を図る学習活動を発達の段階に応じて充実させるとともに,これらの学習活動の基盤となる言語に関する能力の育成のために,小学校低・中学年の国語科において音読・暗唱,漢字の読み書きなど基本的な力を定着させた上で,各教科等において,記録,要約,説明,論述といった学習活動に取り組む必要があると指摘した。

 要するに,表現することが目的ではなく,表現する活動を通して,子どもたちに「  考力・判断力・表現力」をはぐくむことが目的であるとしている。
また,学習指導要領解説では,表現力が目標に加えられた趣旨を,次のように説  している。(P.20〜21)

考える能力と表現する能力とは互いに補完し合う関係にあるといえる。考えを表現する過程で,自分の良い点に気付いたり,誤りに気付いたりすることがあるし,自分の考えを表現することで,筋道を立てて考えを進めたり,よりよい考えを作ったりできるようになる。授業の中では,様々な考えを出し合い,お互いに学び合っていくことができるようになる。そうした考えから,目標において考える能力と表現する能力とを並べて示すこととした。(中略)
算数科においては,問題を解決したり,判断したり,推論したりする過程において,見通しを持ち筋道を立てて考えたり表現したりする力を高めていくことを重要なねらいとしている。こうしたねらいは,他教科などにおいても目指しているところであるが,特に算数科の中では,帰納的に考えたり,演繹的に考えたりするなどの場面が数多く現れる。さらに算数の内容の持つ系統性や客観性から見ても,上記のねらいに最も大きな貢献ができると考えられる。

  このように,表現する活動を行う目的は,「表現する活動を通して,判断力や推論する力,帰納的な考え方や演繹的な考え方などを高めること」であると捉えられる。本年度,表現力指導に焦点を当てて研究していくことは価値のあることだと考える。 
※帰納的な考え方…見つけた決まりをもとにした考え方  演繹的な考え方…根拠をもとにした考え方

 A 学校教育目標の具現化
   本校の学校教育目標は,
   「きらきら かがやく児童の育成」
○ゆたかに すこやかな子 ○きたえ たくましい子 ○かんがえ まなぶ子であり,知・徳・体のバランスがとれた,人間性豊かな児童を育むことを目指してる。その中の「かんがえ まなぶ子」は,自ら考え,自ら学ぶ児童の姿であり,生にわたり学習する基盤を培うことを目標としたものである。自ら考え,自ら学ぶよになることと,子どもたちの思考力・表現力の向上はつながっている。学校教育目の1つである「かんがえ まなぶ子」の育成から,確かな学力の向上につなげていたいと考える。


 B 本校児童の実態及び研究経過より
   本校では,平成18年度から4・5・6学年について,北杜市の学力テストが行  れている。標研式CDT(日本標準)である。3年前から,全校児童の学力の状況(  態)を把握するために,2・3学年についても同じ学力テストを行っている。
   この学力テストによって,本校の児童の傾向として,筋道を立てて考えることが  手なことが明らかになっている。さらに,自己を表現する力が弱いことや,主体的  学んだり,積極的に人と関わったりすることが苦手な児童が多いことも,実態とし  あげられている。
また,昨年度は,《数学的に考える力を高める指導法の研究〜算数的活動の工夫  通して〜》を主題にして研究に取り組んだ。成果として,教師が児童に「表現する力  をつけるために,常に意識して取り組んだ結果,「表現する」「考える」児童が増  てきたことがあげられる。また,算数的活動の場の工夫や,教材の工夫などにより  児童の思考の助けになることなどが明らかになった。課題としては,考えたことが  まく表現できない児童に,表現させるための手立てが実践の中に出てこなかったこ  や,学校全体として指導方法が提案されていなかったこと,児童の実態に沿った臨  応変な授業の流れが検討されていなかったこと等が出された。
   そこで,今年度も算数科を取り上げ,昨年度からの課題を踏まえた上で,表現力  導に焦点をあてて研究を進めていく。また,それらを取り入れた授業実践に取り組み  数学的に考える力を高められるようにしていきたい。


【3.研究の目的】
算数科において,数学的に考える力を高めるための,表現力指導のあり方を,授業実践を通して明らかにする。


【4. 研究の構想及び基本的な考え方】
◎研究の構想
1 表現力指導の工夫
 ○「書くこと」の指導の充実(ノート指導)
・自分の考えや説明をかく。(言葉や数,式,図,表,グラフなどで)
・板書以外の言葉のメモ
    ・整理されたノート作りなど
○説明活動の充実
・電子黒板やホワイトボードなど,発表媒体の工夫
   ・説明の仕方や聞き方の指導など
○表現する活動を取り入れた授業提案
○その他
2 日常的な取り組み
   ○基礎的・基本的内容の定着(数の関係・計算の意味など)
○計算練習,文章題への取り組み
   ○教材の工夫,発問の工夫,板書の工夫
   ○学習規律(話すこと,聞くことなど)
○学級経営(何でも言い合える集団作り,友だちの良さを認められる)
○朝学習の充実
○家庭学習の習慣化(学年に応じた学習時間の確保)
   ○その他
◎基本的な考え方
(1)「確かな学力」の向上について
  (思考力・表現力との関係および算数科における考え方)


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【5.研究内容】
[T]表現力指導の工夫  
 児童は与えられた課題に対して,既習事項との結びつきを考え,工夫して答えを導  き出そうとする。また,新たな解き方で答えを見つけることもあるが,ごくまれである。授業において,どう課題を解決したかをかかかせる場面では,丁寧にかき方の指導をしないと,かき方がわからないという児童も多いようである。児童はその際,課 題に対して何も考えていないわけではないが,表現の仕方をよく知らないために,か いたり説明したりすることができないことが多い。  
 昨年度の研究の反省を踏まえ,本年度は,このように考えたことがうまく表現でき ない児童も,自分の考えをしっかり表現し,数学的に考えることができるようにして いきたい。さらに,自ら考えて答えを出すだけでなく,友だちの考えから新たな考え 方を知る「学び合い」の授業を通して,考えることの楽しさを味わわせたい。  
 本年度の研究は,誰もが実践することが可能で,本校の児童に必要な力を伸ばすこ  とができるものになるよう,次の内容を中心に研究を進めていきたい。
(1)「書くこと」の指導の充実(ノート指導)  研究授業等では学習カードとしてプリントが使われることが多いが,『ノートは思 考の作戦基地』(有田和正氏による)だとも言われているので,普段の授業で,もっ  とノートを有効利用していきたい。
 @どんなノートを使う   
  ・学年に応じたマス目ノートを用い,1マスに1文字書くようにする。
  ・計算の際に位をそろえることができる等の利点がある。
 A何を書く
  ・日付,めあて,板書は必ず
  ・自分の気づきや考え,先生の一言,解法のポイントなどをつけ加える。 (集中して聞くことが必要不可欠になる。)
 Bどう書かせるか
  ・ノートを書く時間を確保する。
  ・ゆっくり話す,繰り返すなど,しっかり伝えることを意識する。
  ・板書計画をしっかり立てる。(名前カードを利用するなどの工夫)
 C自分の考えや説明をかくには(思考の可視化)
  ・言葉,数,式,図,表,グラフなどを用いてかく。
   ・できるだけ考えた順序を思い出しながらかく。(最初から順次よくかけるということは,その問題が分かりきっている場合なので,考える時に回り道をしたり,寄り道をすることは決して無駄ではない。)   
  ・説明のための「言葉」を付け加える。(例:まず最初に,次になど)
(2)説明活動の充実
 説明活動がうまくできるようになると,発表することが楽しくなり,学習内容や解 き方に対する理解が深められると考える。また,表現することは思考の再現であり, 可視化されるので,評価につなげることが可能となる。さらには,考えることをいと わなくなり,算数が好きになるのではないかと思う。
 @発表媒体は
  ・電子黒板とビデオカメラ(または教材提示装置やWEBカメラなど)
   ・ホワイトボード
  ・画用紙
  ・A3用紙
  ・半具体物を操作して
  ・教師の用意した表や用紙に書く など
A話し方(説明の留意点)
  ・ゆっくり,はっきり,大きな声で
  ・相手にわかるように,相手に納得してもらえるように
  ・自分の考えたことを順序よく(思考の再現,思考の可視化)
  ・自信がなければノートに書いたものを読む(発表しながら言葉を付け加えても良い,見ないで話せるとより良い)
B聞き方
  ・自分の考えと比較しながら
  ・わかりやすい説明かどうか
  ・この考えはいつでも使えるのか
   ・効率の良い考え方か などを考えながら聞く
C考えを再現する活動を入れる
  ・班の中での説明,隣同士で説明
   ・決まった人だけが発言することのないように,全員が必ず発言する場を設ける。     ・発表した考え方の補足や言い直し など
D一文を意識した発表を ・文の長さの基本は17文字(プロの小説家の一文あたりの平均文字数)
(3)表現する活動を取り入れた授業提案
@授業提案1・・・学年やブロック等で参観
 ・略案による提案授業(指導意図に校内研との関わりを書く。)
 ・日常の試みをさらけ出すつもりで
A授業提案2・・・全員で参観 ・従来の研究授業。指導案の事前検討,全体での研究会も行う。必要に応じて,指 導主事等の招聘も行う。
B新採用者による授業提案・・・全員で参観 
・指導案の事前検討,全体での研究会も行う。必要に応じて,指導主事等の招聘も    行う。
(4)その他
 @「表現すること」及び「考えること」についての見取り
  ・アンケートによる意識調査から(できれば次回提案)
  ・児童のノート記述や学習感想から
  ・普段の様子から
 A授業を改善する意識を持ち,実践する(資料参照のこと)
 ・「教師の構え」を変える
  ・「働きかけ」(発問・提示のしかた)を変える
  ・板書を変える
  ・「問い」のある授業づくり(児童は表現せざるを得ない状況に追い込まれる)
[U]日常的な取り組み
○基礎的・基本的学習内容の定着(数の関係・計算の意味など)
  ・単元毎のテストを行い,定着状況に応じて復習を行う。
○計算練習,文章題への取り組み
 ・正確に早く計算ができるための取り組み
 ・題意を理解し,問題構造から筋道立てて考え,立式できるようにする。
○教材の工夫,発問の工夫,板書の工夫
 ・わかりやすく,興味・関心のもてる教材をさがす。
 ・算数科の備品の活用
 ・疑問を大切にし,根拠を問う習慣をつける。
 ・学習の足跡がわかる板書を心がける。
○学習感想
    ・短い時間で書かせる。自分の考えと比較したり,分かりやすい考え方を選んだ     り,今日の学習内容について,振り返らせる。発達段階に応じて取り組む。
○学習規律(話すこと,聞くことなど)
○学級経営(何でも言い合える,誤答を非難しない,友だちの良さを認められる集    団作り)   
○朝学習の充実
  ・時間通りに始められるよう事前準備をしっかりする。
  ・何をするのか事前に知らせておく。月・水…読書,火…算数,木…国語 
○家庭学習の習慣化
    ・家庭学習の手引きをもとに,学年に応じた学習時間の確保。
    ・家庭と連携し,粘り強く支えていける態勢作りをする。
○その他

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最終更新日2012/9/12